こんな人へ向けた記事
こんにちは。ログスタの Sora です。東京都内で不動産管理会社の経営をしています。
本記事は、賃貸経営をしている自主管理大家さんへ向けた騒音トラブルの解決方法を解説した記事です。
入居者さんから騒音の相談を受けたら、あなたはどのような行動をしてますか?
大家さんにとって入居者さんの騒音トラブルは、アパートを管理運営していくうえで、とても悩ましい問題のひとつですよね。
本記事は、入居者さんから騒音トラブルの相談を受けたら、どう行動するべきかを解説した記事です。アパートを自主管理している大家さんはぜひ参考にしてください。
大家業でもっとも多い相談が騒音トラブル

入居者さんからの相談や苦情の中で、もっとも件数が多い内容が騒音トラブルです。当社に寄せられる入居者さんからの苦情も、8割近くは近隣住民の騒音に関することです。
そのため、いかに騒音トラブルを解決するかが、健全な賃貸経営の鍵にもなります。
騒音トラブルは、入居者の退去に直結する深刻な問題です。
言い換えれば、大家さんの腕の見せ所です。適切に対応することで、空室リスクを軽減するだけでなく、入居者さんからの信頼を得ることもできます。
今回は、下のようなケースを想定し、その解決へ向けて大家さんのあなたが取るべき行動を順に解説します。
ケーススタディ
相談者(被害者):102号室
苦情内容:ドスドスと物音が聞こえる。おそらく上階の202号室では?
発信源(加害者):202号室?
やるべきこと①:事実確認
まず、最初にやることは事実確認です。具体的には、ヒアリングと現場確認です。
ヒアリング
最初にヒアリングする相手は、相談者の102号室からです。このヒアリングは、Aさんから苦情が入ったその場でおこなった方がスムーズです。
ヒアリングする内容は…
・どんな騒音なのか?(音の種類、大きさ、など)
・騒音に規則性はあるか?(時間帯、曜日、週に〇回、など)
・騒音によって、どんな不便な思いをしているのか?(寝付けない、窓を開けられない、など)
です。
想定される発信源は202号室ですが、ここで大事なことは、あくまでも、想定の加害者が202号室ということです。
音というのは反響するため、騒音の発信源が正確に分からない場合があります。とくに低音は、指向性が低いという特性があります。
※指向性が低い=音の方向が分かりにくい
加害者を決めつけず、ひとつずつ事実を積み上げていきましょう。
現場確認
次は現場確認です。
『百聞は一見に如かず』、『現場百遍』…、現場にこそ解決の糸口があります。
必ず現場へ訪れて、どのような状況なのか確認をします。可能であれば、Aさん宅へお邪魔して、実際の騒音を聞きましょう。
「そんなことしたら、Aさんに迷惑なんじゃないの?」
そう思うかも知れませんが、実は逆です。
なぜなら、Aさんは『自分の思いを理解してほしいから』です。
当社は年間で数十件もの騒音トラブルを解決していますが、被害者の方へ「ご自宅で騒音の度合いを確認させてください」とお願いして、断られるケースはほとんどありません。みさなん快く承諾してくれます。
ここで重要なポイントが。
被害者宅へお伺いする時には、必ず騒音測定器を持参してください。
理由は、騒音を数値化するためです。なぜ数値化しなければならないのか?
想像してください。あなたは騒音の被害者だとします。
あなたの部屋で騒音を確認した大家さんにこう言われました。あなたはどちらの方が納得できますか?
A:これくらいは生活音の範囲です。
B:騒音は56デシベルでした。一般的に60デシベルまでは生活音の範囲とされている数値です。
いかがでしょう?Bの方が納得できませんか?
必ず騒音測定器は用意してください。
高価なものを買う必要はありません。下商品で充分です。参考にしてください。
やるべきこと②:注意喚起1
事実確認をしたら、想定加害者へ注意喚起をします。
まずは注意喚起文の投函です。いきなり電話で注意するよりも、まずはやんわりと書面で注意喚起をします。
下のような内容がオススメです。
入居者各位
※音に関するご配慮のお願い※平素は格別のご高配賜り誠にありがとうございます。
先日、当アパートの入居者様より「足音が響いて困っている」とのご相談を頂きました。新型コロナウィルスの影響により経済活動が制限され、日中もご自宅で過ごす方が増えています。
お心当たりのある方は、特にご配慮下さいますようお願い申し上げます。
特に夜間は、足音や物音が日中より広範囲に大きく響きます。
すべての入居者様へ快適な住生活をご提供致したく考えておりますので、是非とも入居者様にもご協力を頂き、住みやすい環境を保つためにご配慮して頂けますようお願い申し上げます。
何卒ご理解とご協力の程、よろしくお願い申し上げます。
この文面のポイントは、相手を名指ししない点です。
理由は…
・202号室が発信源とは、まだ分からない。
・たとえ発信源だとしても、悪意がないなら配慮が必要
だからです。
やるべきこと③:被害者へのアフターフォロー
このアフターフォローは、とても大事な行動です。
注意喚起文を想定加害者へ投函してから1週間ほど経ったら、相談者Aさんへフォロー連絡をしてください。注意喚起文の投函後、騒音に変化があったのかをヒアリングします。
騒音が収まったのなら、ここで解決ですが、収まっていない場合は次のステップです。
やるべきこと④:注意喚起2
最初の注意喚起では名指しを避けましたが、今回は違います。『202号室 〇〇様』と、宛名を明記した注意喚起文を投函します。
「下階からこのような苦情が来てますが、お心当たりありませんか?」と伝えることで、202号室の人へ問題提起をします。
今回は電話で伝えても構いません。
もし、202号室の人に「心当たりがない」と言われたら、騒音の発信源は別の部屋の可能性があります。そのまま202号室にも、騒音が聞こえないかをヒアリングしましょう。
また、ヒアリングの対象を広げて、騒音の発信源を想定し直します。101号室、103号室、201号室、203号室にも、騒音に心当たりがないかをヒアリングしましょう。
そうやって情報を集めて、また想定される発信源へ注意喚起をする…。これを繰り返します。
たいていの場合は、最初の想定加害者で解決することが多く、発信源が分からないケースは、かなり稀です。
それでも解決しない場合

騒音の発信源に注意喚起しても、解決に向かいそうにない場合は、加害者を退去させる選択肢を考えましょう。
「騒音で契約解除できるの?」
と疑問に思われる大家さんもいます。答えは…はい。契約解除できます。
理由は以下のとおりです。
賃貸物件の賃借人は、民法で『善良なる管理者としての注意義務』が定められています。
これは、『賃借人は賃借した専有部を社会通念上要求される程度の注意をもって使用しなければいけない』という義務です。
騒音を出す行為は、この注意義務違反になるため、契約解除の要件を満たします。
ただ、注意しないといけない点もあります。
『発信源の音が、騒音と呼べるレベルのものか?』の判断です。その音が、社会通念上我慢ができる限度を超えているか?の判断が必要です。
この判断をするためにも、上で紹介した騒音測定器が必須アイテムになります。
絶対NGな2つの行動

ここで、やってはいけない行動を2つ挙げます。
何もしない
建物の所有者は、入居者さんが快適な生活を送れるよう、建物を健全に管理する義務があります。
「放っておけば、そのうち収まるだろう…」
なんて考えは、一番ダメです。
大家業はサービス業です。入居者のために何ができるのかを、日々考え努めなければなりません。
決めつけで話を進める
大家さんは入居者全員の味方です。事実確認をして判断材料が揃うまでは、決めつけで話を進めないでください。
よくあるケースが、入居者の属性だけで判断してしまうケースです。
「〇〇さんは家賃を滞納するから、話が信用できない」
「□□さんは大手企業に勤めてるから、発信源のはずがない」
このように、色眼鏡をかけて物事をみてしまうと、正しい判断ができません。
重ねて言いますが、大家さんは入居者全員の味方です。
被害者に対しても加害者に対しても、中立な立場で対応してください。
まとめ

・入居者から騒音トラブルの相談を受けたら、やるべきことは5つ
1:事実確認
2:注意喚起1
3:アフターフォロー
4:注意喚起2
・それでも解決しないなら、善管義務違反を理由に契約解除も考えよう
・絶対NGな行動は2つ!
1:何もしないこと
2:決めつけること
いかがでしたか?
この記事を読んでるあなたは、入居者さんのことを思っている優れた大家さんでしょう。こうして最後まで記事を読んでくれていることが、なによりの証明です。
世の中には…
『大家業は不労所得を得られる楽な仕事』
このような考えを持っている人が少なからず存在します。
大家業はサービス業です。
定期的に建物を清掃して、入居者が不便をしないようにメンテナンスし、苦情や要望の窓口になる…。決して不労所得ではありません。
むしろ、仕事としてはハードです。
真面目で誠実な大家さんへ向けて、少しでも役立つ情報をこれからも発信できればと思います。
ログスタの Sora でした。
それではまた。
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