「アパート・マンション経営をしている」
「エアコンの交換時期って、判断が難しい!」
「入居者さんのリクエスト、どう応えるべき?」
アパート経営って判断の連続ですよね。
「なるべく入居者さんの要望に応えたい。でも、すべてのリクエストに応えることはできない…」
そんな葛藤が大家さんにはつきものです。
今回は、『入居者さんから部屋のエアコンを交換してほしいと言われた時の適切な対処方法』を解説します。
この記事の筆者は、不動産会社を経営しながら自身もアパート・マンション経営をしている大家のひとりです。
現在の不動産収益は、年間でおよそ1億円になります。
長年の賃貸経営の経験をもとに、大家さん目線で現場の生の声をお届けします。
アパート・マンション経営をしている方には、きっと参考になると思います。
付属設備品の交換は大家さんの義務

賃貸物件の付属設備品の所有者はオーナーである大家さんです。
そのため、エアコンや給湯器など、付属設備品に不具合が生じた場合の修繕義務は大家さんにあります。
大家さん(貸主):住まいとそれに付帯する設備を提供する
入居者さん(借主):その対価として家賃を支払う
これが住居の賃貸借契約の原則です。
では、今回のように入居者さんから「エアコンを交換してほしい」とリクエストされたら、大家さんは必ず交換しなければならないのでしょうか?
答えは『ノー』です。
大家さんに交換する義務があるかないかは…
入居者さんが『交換してほしい理由』によって違います。
なぜエアコンを交換してほしいのか?その理由によって、あなたが取るべき行動は下の3つに分かれます。
1:交換しなければならない
2:交換する義務はない
3:交換したほうが顧客満足度アップ
まずは『交換してほしい理由』をヒアリング
大家さんが最初にやるべきことは、入居者さんへのヒアリングです。
「なぜ交換して欲しいのか?」その理由を入居者さんへ聞いてみましょう。
管理会社と委託契約を結んでいる大家さんの場合、すでに管理会社が理由をヒアリングしているでしょうから、管理会社に理由を尋ねましょう。
おそらく入居者さんの回答は、下の3つのどれかのはず。
・古いから
・壊れているから
・効きが悪いから
入居者さんの回答がどれかによって、対応が変わります。
理由 | 交換の必要性 | 顧客満足度の向上 |
---|---|---|
古いから | × | 〇 |
壊れているから | 〇 | – |
効きが悪いから | △ | 〇 |
グラフにまとめると上のとおりです。
細かい解説は下のパートでそれぞれ解説しますね。
「古いから」が理由なら、交換の義務なし

交換してほしい理由が、単に「古いから」だった場合、交換する義務も、交換する必要もありません。
まず交換する義務について。
大家さんに修繕義務が発生するケースは、設備品として機能しない場合、つまり故障している場合です。
どんなに古いエアコンだろうと、頑張って動いてくれている限り、交換する義務はありません。
続いて交換する必要性について。
エアコンが壊れていない以上、交換する必要性はないです。
エアコンが古いと、電気使用量が増えて入居者さんの光熱費が増えてしまします。少しでも入居者さんの不満を解消してあげたいという気持ちは、同じ大家さんとしてよく分かります。
ただ、「古いから交換してほしい」と、「不具合がある(壊れている)から交換してほしい」とはまったく違うのです。
「壊れているから」なら速やかに対応を
入居者さんが交換してほしい理由が「壊れているから」だった場合は、速やかに交換しましょう。
特に夏場は、可能な限り迅速に手配を取ってください。
近年の日本の夏はとても暑いです。扇風機とガッツで凌げたのは2000年代前半まで。
近年は空調設備がないと、とても過ごせません。熱中症などで悲しい事故が起きてしまう可能性すらありますので、速やかに手配を取りましょう。
また、2020年4月に民法の611条が下記のように改正されました。
要約すると…
『賃貸物件において、設備品も含めて物件の一部が使用出来ず、その使用できない程度が通常使用の範囲を超えている場合には、不具合の度合いにより、そのぶんの家賃は減額される』
ということです。
今回のようにエアコンが壊れて使えない場合…
エアコンが4日間以上使えなかったら、家賃から5,000円が減額されるべき
という指標です。
2020年の民法改正前までは、『借主は貸主へ賃料の減額を請求することができる』という条文だったのですが、改正後は、『~減額される』へ変わりました。
この改正のポイントは…
入居者発信で請求するのではなく,貸主発信で減額しなければならない
ということです。
この民法の改正は、これからのアパート経営で押さえておくべき大事なポイントです。
ぜひともご留意しておいてください。
「効きが悪いから」が一番難しい!
もっとも判断が難しいのがこのケース、「効きが悪いから」の場合です。
エアコンの効きが明らかに悪く、室温が設定温度にまるで届かない状態は、上で解説した「壊れているから」と同様の対応を取ってください。
難しいのは、『効きが悪いのかどうか微妙な時』です。なぜ判断が難しいのか?その理由は2つ。
1:効きが悪いと感じるかは人それぞれだから
2:エアコンガスの補充は高額だから
効きが悪いと感じるかは人それぞれ
快適と感じる温度は 人それぞれ違うように、どれぐらい効きが悪いと感じるかも人それぞれです。
入居者さんに「エアコンの効きは問題ないです!この程度では交換できません!」なんて塩対応をしてしまうと、入居者さんは不満に感じ、それが退去の原因になる場合も。
H3:エアコンガスの補充は高額
入居者さんの要望に応えて、メーカー修理を依頼したとします。
エアコンの効きが悪い原因のほとんどは、エアコンガスの補充で解決するのですが、この費用がかなり高額なのです。
ワンルーム用のエアコンへガスを補充するには、出張費も含めて、40,000円〜50,000円かかります。
2万円もプラスすれば、新品のエアコンが取り付けられる費用です。
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H3:重要ポイント!『判断基準』を持つこと!

では、どう対処したらいいのか?それは…
あなたの中で『判断基準』を持つこと
です。
たとえば、わたしの『基準』は…
・設置して8年未満のエアコンだった場合は修理
・8年以上古い場合は交換
そう決めています。
入居者さんから「エアコンの効きが悪い」と苦情が入ったら、まずお部屋へお邪魔して、実際のエアコンの効きを確認します。
そこで、少しでも「確かに効きが悪いかも知れないな…」と感じたら、上の基準に従って対応します。例外はありません。
わたしが8年と決めている理由は…
費用対効果のバランスが良いのが8年だから
です。
入居者さんがエアコンを古いと感じる年月は、だいたい10年です。
そのため、入居者さんが『古い』と感じる、その少し前の8年を修理か交換かの基準にしています。
そうすることで、入居者さんへ、『なにかあれば迅速に対応してくれる大家さん』と印象を与えることができて、大きな信頼を得られます。
一見、コストがかかるように感じますが、顧客満足度が向上し、長期入居となり、結果的には収入の増加につながります。
顧客満足度と費用対効果を考えよう

上のパートで、『わたしがエアコンを修理か交換か判断する基準は、設置から8年』とお伝えしました。
これは、わたしの所有しているアパート・マンションの間取りに、ワンルームや1LDK が多いからです。
もし、あなたの物件の間取りが2LDK 以上の広さの場合には、もう少し年数を伸ばした方が良いでしょう。
1住戸あたり、複数台のエアコンがあるでしょうから、8年だとサイクルが短すぎて、あまり費用対効果が得られないかも知れません。
『入居者さんがエアコンを古いと感じる年数は約10年』
そう解説しました。
これは、耐用年数や減価償却の話ではなく、心理的な話です。
実際には、エアコンの実耐用年数の平均は15年前後です。中には、23年間、故障知らずで稼働しているものもあります。
近年のエアコンは性能も良く、実耐用年数も長くなっていますので、わたしの基準の『8年』も、そろそろ見直すべきかも知れません。
大家業はサービス業です。
顧客満足度と費用対効果のバランスを見て、適切に判断してください。
おわりに

今回は、アパート経営をしている大家さんへ向けて、入居者さんからエアコンを交換してほしいと言われた時の対処方法について解説しました。
大家業が慣れないうちは、どんなに些細なトラブルや苦情でも、大きな精神的ストレスを感じてしまいます。
そんな時は、この記事でアドバイスしたように、あなたの中に基準を持っておいてください。
きっと、これからのアパート経営に役立つ指標になるはずです。
このブログではアパート経営に役立つノウハウを多く発信しています。もし良ければ、他の記事も参考にしてみてくださいね。
ログスタの Sora でした。
それではまた。
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